NHK BS放送で「女王イサベル」を見た。
主題・・・「女王イサベル」--ヨーロッパの王家の物語
副題・・・「終の楽園アルハンブラ」

■プロローグ
馴染みのなかったイベリア半島の歴史に少し触れた思いがした。
辺境の地?スペインの王家が、ヨーロッパの歴史にこんなに関係が深かったとは思わなかった。
この番組の主題は、次のように解説されていた。
イサベル女王は、イベリア半島からイスラム勢力を駆逐し、
最後の拠点アルハンブラを手に入れました。
異教徒を厳しく弾圧してきた女王ですが、
その女王が異教徒が作ったアルハンブラ宮殿を破壊せず、
その地に自らを埋葬するよう遺言しました。
なぜ女王がアルハンブラを残したのか、
という謎に迫りつつ、その神秘的な美しさを描きます。
1、イサベルの前半生
イサベルはカスティーリャ王国の王女として生まれた。
「イサベル」という名前はよくある名前で、母親もイサベルであり、
長女にも「私の名を授けてイサベルと命名・・・」とあった。
(英語ではエリザベス、?国語ではエリザヴェート、なのだ)

父ファン2世は無能な王だったらしい。
「意志薄弱、優柔不断、政治手腕ゼロ」
あらゆる文献にそのように書かれている。
兄エンリケ4世も同じだった。
「王位とともに父の芳しくない性格を受け継いだ」と解説されていた。

■エンリケ4世
1474年兄の死をもってカスティーリャ王になる。
夫フェルナンドとともにグラナダ王国攻略に乗り出す。
1491年アルハンブラが陥落し、グラナダ王国滅亡。
10年以上の歳月をかけた戦いだった。
戦いの詳細は語られていなかったが、華々しい戦いというより、
着実に包囲を狭めていく戦いだったのではないか、と思う。

■1486年グラナダ北西60キロのモクリンに拠点を設ける
最後は補給路を絶ち、グラナダ王国は降伏した。
2、なぜアルハンブラ宮殿を破壊しなかったのか。
イサベルは、イスラム建築の極致と言うべきアルハンブラ宮殿を破壊しなかった。
それどころか自らの遺体をアルハンブラに埋葬するよう遺言した。
それは何故だろうか?
アルハンブラ宮殿の美しさに魅了され、破壊することが出来なかった。
と言ってしまうと、格好のつけすぎ、一面的、単なるロマンチックな言、だろう。
①破壊する政治的必要性がなかった。
イスラムの破壊は民衆向けのデモンストレーションであること。
アルハンブラは国民の目に触れないため、破壊する政治的必要性がなかった。
②破壊するには惜しい完成された建築であった。
そのままで充分使うことが出来た。
番組では次のように解説されていた。
(アルハンブラ修復を担当する研究者談)
「アルハンブラは国民の目にさらされることのない私的な空間として使われたから、
壊す必要がなかったのです。
国民が目にする町中では、女王は意図的にイスラムの要素を排除してきました。
外に向けられた戦略的な破壊なのです」
3、イサベル女王の子孫
イサベル女王には5人の子供(1男4女)があった。
不幸にも夭折し、ただ一人、次女ファナが残った。
このファナをキーマンにして、イサベル女王の子孫の動向はドラマティックである。
ファナはハプスブル家のフィリップ王子に嫁いでいたが、
精神を病み狂女と言われていた。
夫と父の王室内での権力闘争の板ばさみになったとも、
夫フィリップの浮気に嫉妬したとも言われる。
スペイン王国は風前の灯になる。
番組でイサベルの遺言状が紹介されていた。
「娘ファナへの不安に満ち満ちている」と解説されていた。
興隆を極めた王国が無能の後継者によってあっけなく崩壊する例は多い。
しかしスペイン王国は運がよかった。
ファナの子(イサベルの孫)カルロスとフェルディナンドが傑物だった。
カルロスは後の神聖ローマ帝国皇帝カール5世であり、
フェルディナンドは近代に至るオーストリア・ハプスブルグ帝国の始祖となる。
番組ではスペイン王国のその後について、このように解説されていた。
「イサベルの孫にいたって「スペイン王国はハプスブルグ家のものになる」、と。
その表現は少し的を射ていないと思う。
「イサベルの子孫がハプスブルグ家の当主になり、ヨーロッパの王室の中心になっていく」
と言うべきだろう。
ファナは精神を病んだがキーマンだったわけだ。
別の書籍ではこう書かれていた。
ファナの病状はひどくはなかったらしい。
日常は何もなく、こみいった政治の話になるとパニックとなるらしい。
面白いことにイサベルの母(ポルトガルの王女)も同じ病状だったらしい。
母も娘もストレスに弱い女性であったが、
真ん中の女性(イサベル)だけは傑物だった、というのは不思議なことだ。
4、イサベル女王の人物像
政治的、軍事的手腕は言う必要がない。
・混乱したカスティーリャ王国内を統一。
・イスラム勢力を打ち破りイベリア半島からイスラムを駆逐する。
・カスティーリャ王国とアラゴン王国を統一しスペイン王国の礎をつくる。
・山師と言われたコロンブスを支援し、莫大な利益をもたらす。
それでは人間としてはどういう人物だったのだろうか?
節度を守るバランス感覚を持った人物だったように感じる。
つまり政治的必要性以上にやり過ぎないということ。
そして不必要な争いを起さないよう自らは目立たないよう振舞うこと。
そういう人物像が見えてきた。
<根拠>
①セビリア城に歴代の王の肖像画があるがイサベルのものはない。
セビリア城はカステーリャ王国内にあり、本来の王はイサベルである。
しかし夫フェルナンドの肖像はあるが、イサベルのものはない。
番組では男尊女卑の影響だったのではないか?と解説されていた。
私には、夫フェルナンドを立てるイサベルの気遣いを感じた。
②アルハンブラ宮殿には後のキリスト教国の王が、自らの権力を誇示するため、
刻み込まれた紋章があるが、イサベルのものはない。
イサベルは入口にマリア像を掲げただけである。
イスラムとの戦い既に勝敗が決しており、アルハンブラ宮殿の内部は人の目に触れるところではないので、必要以上の権力誇示はしなかったのだろう。
③遺言状
言葉の断片にイサベルの心使いが感じられる。
娘夫妻に夫フェルナンドのことを、
「私とともに数々の戦いを経て・・・功績を残した父だ」と強調し、
「尊敬してよく言うことをきくように」と諭している。
④激しい異教徒弾圧
イサベルの負の断面として語られるのが、激しい異教徒弾圧である。
番組では次のようにさらっと解説されていた。
「混乱した王国をまとめるには宗教でしかない」
確かにそういう政治的必要性があったのかもしれない。
こういう苛酷さも異教徒憎しというより、政治的必要性によるものと思えば納得がいく。
5、イサベルの遺言状
遺言状の端々に現れる言葉の断片にイサベルの「心使い」が表れていて、興味深かった。
番組ではイサベルの遺言状を、時間をとって紹介していた。

■イサベルの遺言状
イサベル自筆なのかわからないが、美しい書状だと思う。
番組ではこう評していた。
「娘ファナへの不安に満ち満ちている」
「まるで説教のような遺言」
①後継者の指定
後継者の指定はどの君主も遺言するが、イサベルの遺言はそれだけではなく、
その後継者に皆が従うよう命令しているのである。

■ファナ女王に柩
次のような文言がある。
「もしファナがうまく政治を行えない場合には、
私の孫に当るファナの王子カルロスを立て、私の夫フェルナンド王がその後ろ盾となる。
皇太子夫妻はフェルナンド王に従うように。」
「私とともに数々の戦いを経てグラナダを獲得し多くの功績を残した父です。
尊敬してよく言うことをきくように。」
「皇太子夫妻は夫婦仲良く暮らし、国民に迷惑がかかることのないよう国を治めること。
ただ税金をとるだけの為政者になってはなりません。」
②説教のような遺言
番組では「説教のような遺言」だと評していたが、その通りだと思う。
ただ私はこれがイザベルの信条だったのではないかと思った。
・夫フェルナンドに対する信頼、感謝、
・為政者はこうあるべきだという信念
イサベルの人生観が表れているように思う。

























by 道草人
番組「女王イサベル」を見て